このページの要点
- 差出人は依頼者本人。事務所は権利義務に関する書類として作成し(行政書士法1条の3)、発送の手続まで行う。相手との交渉は代理しない。
- 経緯→請求の根拠→請求額と振込先→期限→期限後の対応の順に組み立て、期限は到達日を基準に書く。
- 刑事告訴に触れるなら、対価の形にせず、詐欺と断定せず、実際に進める意思に合わせて書く。
- 借主が会社か代表者か分からなければ2通に分けて出す。配達証明を付け、時効の完成が近くないかを確かめる。
結論:内容証明は差出人本人の名前で、事実・請求額・期限・振込先・期限後の対応を、断定しすぎずに書く
貸したお金が返ってこない、業務の報酬が支払われない。何度も連絡しても反応がないとき、次の一手としてよく使われるのが内容証明郵便です。内容証明郵便は、いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を差し出したかを郵便局が証明する郵便で、配達証明を付ければ、相手に届いた日付も証明されます。意思表示は相手方に到達した時から効力を生じる(民法97条1項)ので、支払の催告や契約の解除の意思表示を「確かに伝えた」ことを、日付とともに残すことができます。
ただし、内容証明は、それだけで相手に支払を強制できる書面ではありません。届いた事実と内容が証明されるだけで、相手が払わなければ、その後は別の手続が必要になります。だからこそ、書面の中身は、後の手続でもそのまま使えるように、事実を正確に、請求の根拠を明確に、そして相手を不必要に刺激しない表現で書くことが大切です。アトラス行政書士法人では、貸金の返還を求める内容証明、業務委託の報酬の支払催告、未払いの受講料の支払催告、月額会費の返金請求などの書面を作成してきました。このページでは、その書面の作り方と記載事項を整理します。貸付の書面の作り方は借用書と金銭消費貸借契約書、遅延損害金の考え方は利息と遅延損害金で扱っています。
名義と役割:差出人は依頼者本人、事務所は書面の作成と発送の手続まで
内容証明は、依頼者ご本人の名前で差し出します。事務所が貸金の返還請求のために作ったヒヤリングシートでは、冒頭の「重要なご案内」で、内容証明はご依頼者様(貸主)ご本人のお名前で発送すること、事務所は権利義務に関する書類の作成として書面を作成し、発送の手続を行うこと、相手方との交渉をご本人に代わって行うことは法律上できないので、相手方から連絡があった場合はご本人に対応していただくこと、を最初に説明しています。行政書士の業務は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することなどで(行政書士法1条の3)、相手方との交渉を代わりに行うことは含まれません。
業務委託の報酬の支払催告では、差出人欄に、依頼者の名前とあわせて「の依頼により作成送付代行」と表示した例があります。誰の意思表示なのかは依頼者本人であることを明確にしたうえで、書面の作成と送付の手続を事務所が代行したことを示す書き方です。いずれにしても、書面の中で請求するのは依頼者本人で、相手が支払や話し合いの連絡をしてくる先も依頼者本人です。書面の末尾に連絡先を書くときは、その点を前提にします。
内容証明のページで使う条文
- 民法97条意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生ずる。相手方が正当な理由なく到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
- 民法150条催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
- 民法412条3項期限を定めなかった債務は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 民法419条1項金銭債務の不履行の損害賠償は、遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率による(約定利率がそれを超えるときは約定利率)。
- 行政書士法1条の3行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することなどを業とする。
ヒヤリングで確かめること:9部構成の問い
内容証明の起案に必要な事実は、依頼者の記憶の中にあります。事務所の貸金返還請求のヒヤリングシートは、差出人、相手方、貸付の内容、返済と督促の経過、詐欺を疑う事情、手元の資料、請求と和解の方針、発送、その他(時効・財産)の9部に分かれています。記入のお願いとして、記憶が曖昧な箇所は「不明」「おおよそ」と書いてほしい、曖昧なまま断定するよりそのほうが正確だ、と添えました。内容証明に書いた事実が後で違っていると、書面全体の信用が落ちるからです。
聞き取り票 貸金の返還を求める内容証明の前に
- お金を貸したのは個人としてか、会社(事業)としてか。差出人の名義が決まります。会社なら商号と代表者名を書きます。
- 相手方の会社の商号・本店所在地・代表者、代表者個人の住所は分かるか。正確な表記は登記事項証明書を取得して確認します。代表者個人の住所の手がかり(名刺、契約書、訪ねたことがある等)も聞きます。
- 貸付ごとに、貸した日、金額、渡し方、借主は会社か代表者個人か、相手が何のために必要だと言ったか、返済期限と利息の約束、書面の有無、代表者が保証すると言ったか。貸付が複数回なら1回ごとに記入してもらいます。振込先の名義や借用書の署名が、借主を判断する手がかりになります。
- これまでの返済の有無と額、返済を求めた経緯と手段、相手の返答や言い訳(当時の言葉のまま)、現在の連絡状況。書面の「経緯」の部分の材料になります。相手の言葉は、後で債務を認めていた証拠にもなります。
- 手元にある資料(借用書、振込明細、メッセージのやり取り、通話の録音、名刺など)。現物は預からず、写しを用意してもらいます。
- 請求する元本の合計、遅延損害金も請求するか、支払期限は到達後何日にするか、分割や減額の申出に応じるか(最低ライン)。利率の定めがなくても法定利率(令和2年4月1日以後に遅滞が始まったものは年3パーセント)で請求できることを説明して選んでもらいます。
- 一番古い貸付の返済期限から何年経っているか。相手の財産の心当たり(不動産、自動車、取引先、取引銀行など)。消滅時効(原則5年)の確認と、将来、判決などを得て差し押さえる場合の検討材料です。
この9部のうち「詐欺を疑う事情」の部は、刑事告訴に触れるかどうかに関わるので、次の見出しで詳しく扱います。
本文の組み立て:経緯→請求の根拠→請求額と振込先→期限→期限後の対応
事務所が作成した報酬の支払催告通知書は、次の順で組み立てています。まず、契約を締結した日と、受託した業務の内容、それを誠実に履行したことを書きます。次に、契約のどの条に基づき、いつ報酬を請求し、支払期限がいつだったか、その期限を過ぎても支払がないことを書きます。そのうえで、請求金額、支払期日、振込先口座を見出しを立てて並べ、履行遅滞と債務不履行の根拠条文を示し、「本書面到達後7日以内」の入金を求め、期限までに支払も連絡もない場合は、契約の解除のうえ法的措置を講じる所存であること、費用と遅延損害金も請求の対象となる可能性があることを予告しました。
条文例貸金の返還を求める書面の本文(構成の例)
1通知人は、貴殿に対し、令和○年○月○日、金○円を、返済期限を令和○年○月○日と定めて貸し付けました(振込により交付)。
2上記返済期限は既に経過しておりますが、本書面作成日までに、貴殿からのご返済はありません。
3つきましては、本書面到達の日の翌日から起算して10日以内に、上記貸付金○円及びこれに対する返済期限の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金を、下記口座にお振込みください。
4上記期限までにお支払いがない場合は、やむを得ず法的手続をとることを検討いたしますので、あらかじめ申し添えます。
期限は「到達の日の翌日から起算して○日以内」と、到達日を基準に書くと、配達証明の日付と合わせて期限を特定できます。日付を併記するなら、実際の到達日によって期限がずれないよう注意します。
請求金額の書き方にも気を配ります。報酬の支払催告では、請求金額のあとに「消費税対象外」と括弧書きを添え、金額の中に消費税が含まれるのかどうかで食い違いが出ないようにしました。振込先は、金融機関名・支店名・預金種目・口座番号・口座名義まで書きます。相手が振り込もうとして口座が特定できなければ、期限内に払えなかった理由を与えてしまいます。
支払期限の日数は、ヒヤリングシートでは「通常は7日〜14日程度をお勧めしています」と添えています。短すぎると、相手が振込の準備をする時間がなく、かえって「払う気があったのに期限が短すぎた」と言われます。長すぎると、催告の緊張感がなくなります。未払いの受講料の支払催告書の書式では、分割払いの契約で法律上必要な書面の催告の期間を意識して、支払期限を「到達日の翌日から数えて21日目より前の日になるときは21日目」に繰り下げる書き方をとりました。取引の種類によって、法律が求める催告の期間がある場合は、それを下回らないように期限を決めます。
受講料の支払催告書では、未払いになっている回ごとに、支払期日と金額を表にして示しました。分割払いの一部だけが止まっている場合、どの回の分をいくら請求しているのかが一目で分かれば、相手も確認しやすく、払った・払っていないの食い違いも起きにくくなります。同じ書式では、再決済と振込が重ならないよう、支払う前に連絡してほしいと書き、さらに「この書面だけで当然に契約の解除や期限の利益の喪失が起きるわけではない」こと、すでに解除している場合は精算の定めに従うこと、を明記しています。催告書の効果を正確に書いておくことで、相手が書面の意味を取り違えて、かえって事態がこじれるのを防ぎます。期限の利益の喪失の手続は期限の利益の喪失で扱っています。
刑事告訴に触れるときの書き方:対価の形にせず、断定しない
貸したお金が返ってこないとき、「だまされた、詐欺だ」と感じて、内容証明に刑事告訴のことを書きたいと考える方もいます。事務所のヒヤリングシートでは、刑事告訴に触れる表現は、正当な権利行使として法律上問題のない範囲に事務所で調整して起案すること、告訴まで実際に進める気持ちがあるかどうかで書き方が変わるので率直に聞かせてほしいこと、を冒頭で伝えています。
詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させた者を罰するもので、10年以下の拘禁刑と定められています(刑法246条1項)。貸金について問題になるのは、借りた時点で、返す意思や返せる見込みがないのに、あるかのように装って借りたかどうかです。借りた後の事情で返せなくなっただけでは、詐欺にはなりません。そこでシートの「詐欺ではないかと疑われる事情」の部では、借りるときの説明で後から嘘と分かったこと、借りた直後の不審な行動、同じように貸して返してもらえていない人がいるか、借りた時点で返せる見込みがなかったことをうかがわせる事情(多額の借金、税金の滞納など)、を「借りた時点」に絞って聞いています。
刑事告訴に触れる表現の書き分け
| 避ける書き方 | とる書き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 「期限までに支払わなければ、刑事告訴する」 | 「期限までにお支払いがない場合は、民事上の法的手続のほか、刑事告訴を含めた対応を検討いたします」 | 支払と告訴の取りやめを引き換えにする「対価の形」を避け、検討する対応を並べて書きます。 |
| 「貴殿の行為は詐欺です」 | 借りた時の説明と、後から判明した事実を、事実として並べて書く | 詐欺に当たるかどうかは評価です。断定は避け、事実で示します。 |
| 告訴まで進む意思がないのに、告訴を強く予告する | 実際に進める意思がある場合に限って触れる。意思が固まっていなければ、民事の手続の予告にとどめる | 実行するつもりのない予告は、書面の信用を損ないます。 |
ヒヤリングシートの請求方針の部でも、期限内に支払も連絡もない場合にどうするかを、民事の法的手続(訴訟・支払督促)に進む、刑事告訴も実際に進めたい、内容証明への反応を見てから決めたい、の三つから選んでもらっています。「刑事告訴も辞さない」と書く以上、実際に告訴まで進める意思があるかどうかで書面の書き方が変わる、と注記したうえでの質問です。
相手から連絡が来たとき:本人が対応し、応じる範囲は先に決めておく
内容証明が届くと、相手から電話やメッセージで連絡が来ることがあります。「分割にしてほしい」「半額なら払える」「そもそも借りた覚えはない」など、内容はさまざまです。相手とのやり取りは、差出人であるご本人が行います。事務所は相手方とのやり取りには関与しないので、書面を納品するときに、相手から連絡があった場合はご本人に対応していただくことを、あらためてお伝えしています。
その場で慌てて不利な約束をしないために、ヒヤリングの段階で、和解の余地についての方針を決めておいてもらいます。シートでは「分割払いの申出があれば応じますか」「減額してでも早期回収を優先しますか(応じられる最低ライン)」を聞いています。分割に応じるなら、何回までなら受け入れるのか、初回にいくら払ってもらうのか。減額に応じるなら、どこまでなら下げられるのか。これを先に決めておけば、相手の申出にその場で答えずに、「検討して書面で回答する」と持ち帰ることもできます。分割の合意がまとまったら、口頭で済ませず、支払条項を書面にします(支払条項の書き方)。債務を認めてもらう書面を作れば、時効の管理にもなります(債務承認・弁済計画)。
ご相談と回答 内容証明のご依頼で聞かれたこと
貸したお金を返してもらうための内容証明で、刑事告訴にも触れたいのですが、行政書士に作成を頼めますか。
作成できます。内容証明は、ご本人の名義で出す権利義務に関する書類だからです。ただし、相手方との交渉をご本人に代わって行うことはできないので、相手からの連絡にはご本人に対応していただきます。刑事告訴に触れる部分は、支払と告訴の取りやめを引き換えにする形を避けて、検討する対応として並べて書き、詐欺だとは言い切らない書き方にします。
相手が支払に応じたら、内容証明のほかに書類は要りますか。
一括で全額が振り込まれれば、着金の記録が残ります。分割や減額で合意する場合は、支払義務の承認、金額、期日、遅れたときの扱い、清算を書いた合意書を作っておくと、その後の不払いに備えられます。
宛先と発送:会社宛と代表者個人宛の2通、配達証明、時効の確認
相手が会社を経営していて、借主が会社なのか代表者個人なのかがはっきりしない場合、事務所は、会社宛と代表者個人宛の2通に分けて発送することを勧めています。会社と個人のどちらが借主かを相手に選ばせず、双方に責任を問う形にするためです。会社の商号・本店所在地・代表者は、登記事項証明書を取得して正確な表記を確認します。代表者個人の住所が分からなければ、名刺や契約書、以前訪ねたことがあるかなど、住所につながる手がかりを聞いておきます。
発送には配達証明を付けます。相手に届いた日付を郵便局が証明するもので、支払期限を「到達の日の翌日から」と数えるために必要です。また、内容証明で催告をすると、その時から6か月間は時効が完成しません(民法150条1項)。ただし、その間に再度催告しても、さらに猶予されるわけではありません(同条2項)。ヒヤリングで、一番古い貸付の返済期限から何年経っているかを確かめるのは、時効の完成が近いかどうかで、書面を出す時期と、その後の段取りが変わるからです。債務者に残高を認めてもらう承認の書面については、債務承認・弁済計画のページで扱っています。
請求の内容は、貸金だけとは限りません。月額会費の返金を求める通知書では、退会の意思表示がすでに相手に到達していること、返金額の計算、今後の請求や接触を断ること、主張を裏付ける証拠の目録、を並べました。退会や解約の意思表示は、到達した時から効力を生じる(民法97条1項)ので、いつ、どの方法で伝えたのかを記録とともに示すことが、返金請求の書面の柱になります。証拠の目録には、退会を申し出たメッセージの画面、引き落としの記録、規約の該当部分など、主張の一つ一つに対応する資料を並べます。
内容証明を出す前の確認
- 差出人は依頼者本人の名義になっているか(会社なら商号・代表者)。
- 相手方の表記は登記事項証明書などで確認したか。会社宛と代表者個人宛を分けるか。
- 貸付の日・金額・方法・返済期限など、書面に書く事実は資料と一致しているか。
- 請求額の内訳(元本・遅延損害金)と、遅延損害金の利率・起算日は正しいか。
- 支払期限は到達日を基準に書いたか。法律が求める催告の期間を下回っていないか。
- 期限後の対応の書き方は、実際の意思に合っているか。刑事告訴は対価の形になっていないか。
- 配達証明を付けるか。時効の完成が近くないか。
よくあるご質問
内容証明は、自分の名前で出すのですか。
はい。内容証明は依頼者ご本人の名前で差し出し、請求するのもご本人です。事務所は、権利義務に関する書類として書面を作成し、発送の手続を行います。相手方からの連絡にはご本人に対応していただきます。
行政書士に頼むと、何をしてもらえますか。
事実関係のヒヤリング、請求の根拠と記載事項の整理、書面の作成、発送の手続です。相手方との交渉をご本人に代わって行うことはできません。
内容証明に刑事告訴と書いてもよいですか。
支払と告訴の取りやめを引き換えにする書き方は避け、「期限までにお支払いがない場合は、民事上の手続のほか、刑事告訴を含めた対応を検討する」と並べて書くのが基本です。詐欺と断定せず、借りた時点の事実を示します。実際に進める意思があるかどうかで書き方を変えます。
支払期限は何日にすればよいですか。
到達日の翌日から7日〜14日程度が一般的です。分割払いの契約などで、法律が一定の期間以上の催告を求めている場合は、その期間を下回らないようにします。
相手が会社と代表者のどちらか分からないときは、どうすればよいですか。
振込先の名義や借用書の署名を手がかりに判断しますが、はっきりしない場合は、会社宛と代表者個人宛の2通に分けて発送する方法があります。会社の表記は登記事項証明書で確認します。
あわせて読みたい、関連する別のガイド
- 解除・出来高精算・倒産・紛争解決建設工事・リフォームの請負契約書ガイド
- ホームページ制作のトラブルとキャンセルへの備えWeb制作・デザインの契約書ガイド
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、当事者の関係や取引の実態によって結論が変わることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた金銭消費貸借契約書、金銭受領確認書、連帯保証人承諾書、金銭消費貸借契約変更合意書、返済完了確認書、債務弁済契約書、債務承認書、公正証書の原案と手数料の試算書、内容証明郵便の文案とヒヤリングシート、示談書・合意書の支払条項、債権譲渡(ファクタリング)契約書、資金投資契約書などを、個別の依頼者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索